しかしながら、古今東西で悲惨な戦争 は繰り返されてきました。戦争による死者の数はたいていの時代で地震や火山 の噴火といった天変地異による死者の数よりもずっと多いのです。わが日本は 地震国と言われていますが、有史以来の地震による記録に残っている死者の総 数はおおよそ50万人くらいですが、第2次世界大戦による死者の数はわが国 だけでも646万人にも達しているのです。
では戦争はどのような理由で起こるのでしょうか。第2次世界大戦について は世界恐慌による世界経済の混乱の中で、ドイツや日本といった自国や植民地 に石油などの資源をあまり持たない国の経済が破綻したために、植民地獲得の ための侵略戦争へ向かわせたのがおもな原因と言われています。
それでは、持 てる国と持たざる国、富める人と富まざる人の差をなくして平等にすれば戦争 をなくすことができるのではないか。これが第2次大戦後、一時、世界的に大 きな力を持ち得た共産主義(あるいは社会主義)の出発点にある考え方です。 そして、この考え方は現代の共産主義のみならず古今東西において何人もの思 想家や宗教家によって唱えられ、そして、小規模な宗派や村落で実践され、あ る程度の成功を見てきました。
でも、みなさんご存知のように現代共産主義の本家本元であったソビエト社 会主義連邦共和国はたった70年あまりで崩壊し世界地図の上から消え去って しまいました。それと前後して共産党が支配していた多くの東ヨーロッパ諸国 もそのほとんどが共産主義を捨てて、いまでも共産党が支配しているのはセル ビア共和国など1、2の国を残すだけとなりました。
わが国の隣国である中華 人民共和国においても共産党の政権は続いているものの経済は自由解放路線に 変更され、共産党員という特権階級を政治支配者とする実質上の貴族共和制に 移行しております。歴史を紐解きますと日本でも奈良時代には公地公民制と言 いまして、すべての土地を国有地として人々にひとりあたり同じ面積の土地を 貸し与えるという制度をとったこともありました。しかし、これも長続きせず に大貴族や寺社が私有地を囲いこむという荘園制に移行していきました。
では、何故、共産主義の政策はうまくいかないのでしょうか。多くの人達は 共産主義が机上の空論に終わっていることを指摘しています。ソ連でも奈良朝 においても政治や経済の中枢を担う有力者には数々の特典がありました。そし て、いつの時代でもどこの国でも政権とは腐敗するものです。いつしか建て前 と本音が分離して有力者には物や金が集まり、一般大衆は搾取されるという状 態になり、共産主義がその不公平の理論的な根拠とされてしまいます。
それに 対して一般大衆の不満は高まり、いつかその不満は爆発し政権は崩壊するので す。しかし、共産主義政策が失敗に終わるのはそれだけが原因でしょうか。そ れだけが原因ならば政権の腐敗を防止してより徹底的に共産主義的政策を実施 すればうまくいくはずです。このような考え方が急進的な共産主義であり多く の場合カンボジアのポルポト政権や中国の文化大革命の時代のようにほんの数 年で崩壊してしまいます。