これらの研究プロジェクトの中ではスプーン曲げや雨乞いなどの気 象のコントロールなどが研究されていたようですが、その詳細はいまだに完全 に公開されてはいません。そのなかでアメリカ政府の支援のもとにSRIイン ターナショナルで行なわれた遠隔透視(remote viewing)の研究について検討し てみましょう。
遠隔透視とは遠く離れた所の情景を透視する術のことです。これは現在の自 然科学ではまったく証明できないことなのですがこの実験に参加した科学者が 述べているように現実に存在するテクニックなのです。実験の方法を簡単に述 べますと透視能力者には研究室に待機してもらいます。
一方、ビーコンと呼ば れる別の人物にランダムに選ばれた透視対象の場所を書いた紙が入った封筒を 渡し、彼にその場所に行ってもらってその場所の写真を撮ってきてもらいます。 その間にインタビュアーが透視能力者に対してビーコンが行った場所について の質問をし、そのやり取りを記録するというものです。
もちろん、透視能力者 には透視対象の場所を事前にはまったく予想できないように配慮がされていま す。そしてビーコンが帰ってきたら透視結果と実際にビーコンが行ってきた場 所とをジャッジが比較するのです。
一連の結果から驚くべき事がわかってきました。まず、個人差はかなりある ものの遠隔透視の能力はたいていの人にごく普通に備わっている能力らしいこ とです。たとえばスーザン・ハリスという女性は夢にでてきた詩を記憶してい たということで実験に参加することになったのですが、彼女は超能力者でも宗 教家でもなくニューオリンズの大学の医学生に過ぎませんでした。彼女は透視 対象の2/3を透視することができましたが、これだけの結果が偶然に起こる確率 は0.01%に過ぎません。
もうひとつの重要な実験結果は遠隔透視はその距離には影響されにくいとい うことです。たとえば1979年には別の透視能力者について大陸間の遠隔透 視の実験が行なわれました。ローマにいるビーコンは40の目標地点の中から 無作為に1つの地点を選び、その地点に15分間とどまりました。その間、ア メリカのデトロイトにいる女性が遠隔透視を試みました。この実験は10回反 復され、そのうち6回についてジャッジは透視の正確性に対して高い評価を下 しました。
さて、このような研究結果にもとづいてアメリカ軍は遠隔透視の技術を実戦 に使用しているのでしょうか? 答えはノーです。その理由は遠隔透視という 技術が持つ不正確さにあります。2/3あるいは6/10という数値は統計学的に見 てあきらかに偶然の産物ではないことを示していますが、実戦に使用するには あまりにも低い値です。遠隔透視による偵察結果の1/3が誤りだとしたら、あな たはその偵察結果を信じて命を的に戦うことができるでしょうか?
遠隔透視が不正確な原因はメンタルノイズにあると言われています。メンタ ルノイズとは正しい透視イメージに対して人間の意識がかけたフィルターのよ うなものです。黄色の球状のものが見えるとすぐにグレープフルーツを連想し てしまいます。しかし、このグレープフルーツは遠隔透視で見たものではなく て「黄色の球状のイメージ」によって記憶の中から連想されて出てきた映像に すぎないのです。
また過去の経験や、時には未来におこる強い事件までもがか すかな遠隔透視によるイメージを変容し、ついには全く別物のイメージを作り 上げてしまいます。このようなメンタルノイズはトレーニングによってある程 度区別できるようになりますし、遠隔透視についての経験豊富なインタビュア ーを置くことによってもある程度は防げるものですが、完全に閉め出すことは できないようです。このメンタルノイズが遠隔透視の的中率を下げるのです。
また、遠隔透視によるイメージ自身もかなりあやふやなものです。たとえば 「とても高い、迫ってくるような物体。とっても大きな、高い木だわ。 木の後ろには何もないみたい。あるのは、急な坂か断崖か絶壁のよう」 というようなものです。これはアメリカが誇る軍事偵察衛星やステルス偵察機 と比べれば明らかに曖昧で軍事的な利用価値の低いものです。
さらに、透視能 力者の健康状態や気分が透視結果に大きな影響を与えることが知られています。 これらの結果を踏まえて、アメリカとしても遠隔透視は実戦には向かないと判 断したのでしょう。戦争に向かないということはビジネスに使うにも不正確で あるということを意味しますし、遠隔透視の結果に自分の人生をゆだねるなど ということは考えられないことですね。